プロジェクト紹介


  アフリカ未電化地域での再生可能エネルギー活用研究

 当社は2008年8月にJICAの委託を受けてケニアとウガンダを対象として「アフリカ未電化地域での再生可能エネルギーの活用と普及に係るプロジェクト研究」を実施した。これは同年5月にわが国で開催された第4回アフリカ開発会議でわが国のアフリカ援助の拡大方針が示されたのを受け、今後の大きなテーマである太陽光発電や小水力発電などの再生可能エネルギーをアフリカの未電化地域でどのように開発していったらよいかについて研究するものである。アフリカは砂漠やサバンナなど乾燥地帯というイメージが強いが、地域によっては水力資源が豊富なのである。もちろん、太陽光はどこでも利用可能である。このテーマについては、当社は2005年に太陽光発電にしぼって同様のプロジェクト研究を実施しており、その後の経験などをもとに当社が得意とする太陽光発電や小水力発電についての開発戦略を提案できるというまたとない機会であったと言える。

 JICAもこのテーマについてはすでに20年以上取り組んでいるわけで、現地には電気を使いたいという強いニーズがあることは明らかなのだが、なかなかよい開発戦略が生まれてこない。これは世銀やUNDPといった援助機関でも同様である。この問題に関して、この研究に着手する前から当社としては次のように考えていた。

 
1.アフリカに適した太陽光発電は簡単な技術体系であり、素人でもちょっと勉強すれば作れて使える技術である。このため、住民を教育し、その導入への環境整備(資金や流通など)について援助すれば彼らは自分たちで太陽光利用を進めていくことができる。

 2.小水力発電はピコハイドロという超小型クラスを除けば、自然条件(地形や水量など)に適合した開発を行う技術(計画、設計)は高度なもので、いい加減な技術を使えば大雨などでたちまち崩壊してしまう。経験のある技術者が必要なテーマであり、素人が多少勉強した程度では開発できない。このため、途上国が独自に開発を進めようとすればまず技術者育成から始めなければならない。


 このように太陽光発電と小水力発電はそのアプローチの仕方は全く違っているというのが当社の基本的考え方である。小水力発電は中国、インド、ネパール、ベトナムなどでは技術者がいて多くの実例が見られるが、どんなに小型であっても設計や施工は専門家の手を借りる必要があり、アフリカではそういった技術者はほとんど育っていないため、適地があっても自国だけでは開発は難しい。これに対して、太陽光発電は日照のあるところではどこでも利用可能であり、また、市販の機器を接続するだけで利用できるため、だれでも取り組むことができる。多少の計算は必要になるのだが、それもそれほど難しくはない。そんなことを考えながら、未知のケニア、ウガンダに向かったのである。

UNIDOのENERGY KIOSK

 まず最初の訪問地であるケニアのナイロビである。ここは高原地帯のため大変涼しい。赤道直下のケニアでは意外にも高原気候を利用してジャガイモ栽培が盛んなのである。ここでいきなり衝撃的なプロジェクトに出会った。それはUNIDOが進めているEnergy Kioskというプロジェクトで、太陽光発電や小水力発電を組み合わせて未電化地域の住民が携帯電話や充電式照明器具を充電できるようにしている。充電は有料でその売上金は設備の運営費に活用されている。これはまさに当社が提案しているコミュニティソーラーシステムと同じではないか。先を越された。同じようなことを考える人はどこにでもいるものである。ケニアでは携帯電話で送金や買い物の支払などができるサービスが大人気であり、そういったこともあって地方部でも携帯電話の利用者は急増している。携帯電話会社としても都市部が飽和状態に近いため、地方部のお客を開拓する必要があるのであろう。したがって未電化地帯ではどうやって携帯電話を充電するかということが、我々が想像する以上に大きなテーマになっているのである。衝撃を受けると同時に当社の構想への確信が持てたのであった。


Energy Kioskの内部  携帯電話とランタンを充電中


Energy Kioskの屋根に設置されたソーラーパネル

ウガンダでの調査

 
次に訪問したのがウガンダである。ウガンダと言えばあの人食いアミン大統領のイメージが強いが、もとはこの地域では最も栄えた国だったそうである。別名「アフリカの真珠」と呼ばれている緑豊かな国で、食糧生産は問題なさそうである。しかし、電気の面では全くダメであり、地方部で電気が使えるところはほとんどない。したがって、太陽光発電を普及させようと政府や援助機関が躍起となっている。

 地方部を回ってみればどこも同じようなもので、人々は灯油ランプで昔ながらの生活を送っているが、やはり携帯電話の普及率は高い。太陽光発電設備を設置しているのはごく一部の高所得者に限られている。1セット500ドル以上ですからね。携帯電話が20〜30ドルで買えるのとは訳が違う。また。太陽光発電設備を販売しているのは零細業者で、高いから売れない、売れないから1個当たりの利幅を稼ぐため価格を高めに設定するという悪循環が起きている。割賦販売といってもせいぜい6回払い程度であるから一般住民はなかなか払えない。これに対して、学校や保健所には政府やNGOなどが太陽光発電設備を設置して照明が使えるようにしているケースがかなり見つかったが、そういった設備があっても携帯電話充電ができることに気がついている人はほとんどいない。たとえば、自動車用充電アダプターを使えばバッテリから充電できるし、あるいはインバーターという220Vに変換する装置を使えば携帯電話に付属している充電アダプターが使えるのである。調査を続けながら、太陽光発電設備がある施設では、こうすれば携帯電話充電ができるということを写真を見せながら説明していった。皆、真剣に聞いている。自動車用充電アダプターなどは安い製品が出回っているため、そういったものを差し上げた時もあった。もらった人は飛び上がって喜んでいた。

 ある村で日用品を売っている店の屋根にソーラーパネルが見えたので中を覗いてみた。そこで行われていたのは予想通り携帯電話充電ビジネス。大量の自動車用充電アダプターを買い込んで村人が持ち込む携帯電話の充電をしていた。店主はこのやり方を町で誰かに教わったそうである。地元の金融機関から借金してソーラーパネルやバッテリを購入したとのこと。連日、多数のお客さんが来るようで返済はまもなく終わるとニコニコしていた。そのチャレンジ精神に敬意を表したい。あなたはエライ!!! 携帯電話充電の潜在的需要は大きく、それに太陽光発電を利用するというやり方は有力なローカルビジネスとして、アフリカ地方部で今後、燎原の火のごとく広がっていくであろう。もうこれは止められない。当社が提案しているコミュニティソーラーシステムは、まだこういったやり方を知らない地域ではその種火となり、太陽光発電に関する知識をアフリカ全体に拡大する役割を果たすであろう。もちろん、このシステムの第一のねらいは公共施設に取り付けられた太陽光発電システムの維持費の確保なのだが。

携帯電話充電ビジネスの現場
 アフリカのピコハイドロ

 話は変わって小水力発電。ピコハイドロというのは小川のような流れを利用して100W(100kWではない!)程度の発電を行う簡単な装置であり、ベトナムの山奥などでは多数用いられている。ただし、得られる電気は質が悪く安定しない。それでもないよりはずっとマシということで現在でも利用している人は多い。ウガンダの場合、丘陵地帯で比較的雨も多いのであちこちに小川が流れておりピコハイドロを使えば発電できそうである。このため、ウガンダ政府の唯一の水力技術者にこの装置の構造や利用可能性について説明した。しかし、絵を描いて教えても相手はイメージがわかず、ピンとこない様子。その話を別の役所でしてみたら、その装置は以前、誰かが見本として一台持ってきたが、どうやって使うのかわからず放ったらかしになっているという話が出てきた。これはラッキーである。すぐそれを探しに出かけた。そうしたら会議室の奥に転がっているのが見つかった。以前、この装置について南米のペルーで説明したところ、あちらでは噂には聞く幻の装置ということだったので、いずれ見本を送りますということで後日ハノイからペルーのリマまで小包で送ったことがある。あのときも梱包とか郵便局窓口でのやりとりなど結構苦労した。それを思い出した。到着まで船便で半年かかったそうな。地球を完全に半周ですからね。今回、実物がすぐ近くにころがっていたのは強運である。早速、借用書を書いて借り出し例の水力技術者のオフィスに持ち込んだ。ちょっと分解して、ここがプロペラでここが磁石や発電コイルなどと説明し、どこかで実験しようということになったが帰国予定が近づき時間切れになったのは残念。でもウガンダで最もふさわしい人に実物を見せることができたのは嬉しいことである。これには後日談があり、その技術者が近くの小川に据え付けてみたそうで、発電できたョーとメールがありました。Jim君よくやったぞ。彼は「日本からは魚をもらうより、魚のとり方を教えてもらいたい」と正論を言っていた人です。あとはその装置をマネして国産化を検討してもらいたいところである。そんなに難しい技術ではないのだから。


発見された中国製ピコハイドロ


 
アフリカにおける太陽光発電普及戦略

 やはりこの調査で最も求められていたのは太陽光発電をいかに普及させるかというシナリオだったのであろう。これについては、世界的にこれまでずっとSolar Home System という個人住宅用のシステムを普及させるということが目標となってきた。しかし、アフリカではごく一部の高所得者が購入しているケースはあるものの平均的家庭に導入が進んでいるケースは全くないと言ってよいだろう。価格が1基数百ドルと高すぎるのである。そのうちソーラーパネルのコストが半分以上を占めている。また、太陽光発電に関する商品知識を持っている人も地方部にはほとんどいない。知らない、見たことがない、使ったことがないという商品にいきなり数百ドル払う人はまずいないであろう。たとえ分割払いであっても。これは当たり前のことのように思えるのだが、これまで援助関係者はそういった点に無関心であった。その結果、支払方法をいろいろと工夫して買いやすくしようということに大きな労力が費やされてきた。この点については当社としては
2005年に担当したプロジェクト研究で一応の結論を導いていたため、今回は商品普及に必要な知識をどのように広めていくかという新たな観点から検討を行った。

 当社の基本的なスタンスは、消費者が新しい商品やサービスに対価を払う場合、その購入によって得られる便益に確信(confidence)が得られるまで行動しないということである。携帯電話が急速に普及したことについても、価格低下という理由もあるが、
近所の人や友達が使っているのを見て、借りて使ってみてこれは「便利だと実感」できるという状況がつくりやすいという説明が成り立つ。これに対して太陽光発電については、見たり聞いたりしたことはあったとしても便利だと確信できる状況というのは地方部ではなかなかつくりにくいのではないだろうか。もし、太陽光発電による携帯電話充電などのサービスが地方部で普及していけば、一般住民もこういった新しい技術に親しみを持ち、「便利だと実感」してさらにいろいろ充電式器具やソーラーパネルと組み合わされた機器などを購入して使ってみようという人が出てくるのではないだろうか。そのようにして太陽光発電について確信を持った人が増えてくれば、その中からかなり高価なものでも買って使ってみようという人が出てくるであろう。したがって、資金メカニズムよりも先に地方部の住民に必要な知識を植え付けるメカニズムが必要と考えたのである。さらにそのための手法として当社が提唱しているコミュニティソーラーシステムが利用できるのではないかと詳しい検討を行った。

 最終的には、これまでのいきなりSolar Home System の普及に取り組むという戦略ではなく、コミュニティソーラーシステムから始めて充電式照明(ランタン)などの普及を図り、さらにSolar Home System に発展させていくという段階的なシナリオを提案したのである。


 報告書は
JICA図書館からダウンロードできます。