プロジェクト紹介


太陽光発電利用地方電化プロジェクト研究

 当社では2005年5月に太陽光発電を利用した未電化村落の電化(いわゆる地方電化)の手法についての研究と今後の開発アプローチについてのプロジェクト研究を行った。(JICA委託事業)このテーマは、16億人いると言われている世界中の未電化世帯の人々に対して電化による生活水準の大幅な向上を実現するとともに、灯油ランプやディーゼル発電を減らして自然エネルギーに変えることで地球温暖化対策にも貢献できるというメリットもあるため、現在の世界にとって極めて重要な内容を含んでいる。特に、今後の援助の重点地域であるアフリカ地域には大きな需要が存在している。また、わが国は世界でも最も太陽光発電を利用している国であり、国際社会における責任という点からもこのような太陽光発電を利用した援助事業には大きな役割が期待されている。

 現地調査対象には、JICAが行った太陽光発電パイロットプロジェクトの中からラオスとボツワナの太陽光発電プロジェクトが選ばれた。
ラオスのプロジェクトは当社が実施したものであり、よく状況はわかっているため、当社ではボツワナのプロジェクトを詳しく調査し、ラオスと比較することを試みた。

 ボツワナは南アフリカ共和国の北に位置し人口は約170万人である。ダイヤモンドの産地として有名であり、国民所得もアフリカの中では非常に高い。しかし地方部には電気のない村もたくさんある。こういった村を3か所選んでJICAは太陽光発電設備による電化パイロットプロジェクトを実施したのである。



未電化村落の住宅

太陽電池パネル

子供部屋に太陽光発電のコントローラが置いてあるが、カバーがあるため内部のメカニズムはわからない。

ボツワナの大地に沈む夕陽


 ボツワナではラオスとは違う事業手法が採用された。ラオスでは太陽光発電設備を個人が長期分割払いで購入して、最終的には自分の財産とするという方式であったが、ボツワナでは設備を購入するのではなく、電気を使う利用料を払うという方式である。私たちが電力会社に電気代を払うのと同じような発想である。このやり方だと利用者はスイッチを入れたら確実に電気が使えることを期待するため、バッテリが劣化した場合、コントローラが故障した場合などに事業者はすぐメンテナンスを行う必要がある。そうしないとユーザーは料金を払わないという行動に出てトラブルになる。しかし、対象村落は車で何時間も走らなければ行けない奥地にある。したがって、サービスコスト部分を多めに料金に入れておかなければ赤字になってしまう。これに対してラオスでは買った設備には自分で責任を持つという方式であり、故障しても自分で直すか部品を買ってきて交換することが基本となり、事業者が現地に行く必要は少ない。このため、サービスコスト部分が少なくて済み、料金は比較的安く設定できるのである。ユーザーとしても、料金を払い続けて設備を自分のものにしたいという気持ちがあるし、そのためには大切に使おうという意識が働く。もちろん、利用者にメンテナンスや修理方法をよく教育するという手間は必要だが、太陽光発電は非常に簡単な技術であり、住民が自分で維持管理することは十分可能である。この点はラオスで実証ずみである。

 ボツワナの方式は「料金は高くても品質のよい電気を使いたい」というニーズを持った利用者には適しているが、資金的余裕のない未電化村落の人々には受け入れにくいやり方だったようである。結局、半数以上の需要家が料金を払い続けることが困難となり契約を解約したため、事業者の収入も半減してパイロット事業は危機的状況に陥ってしまった。

報告書(1.3MB pdf)はJICA図書館からダウンロードできます。

教訓ー1 組織的学習(Organizational Learning)

未電化村落の低所得者層を対象にして太陽光発電設備の普及をビジネスとして行っていこうとすれば、当然、ユーザーが払う料金を安くしなければならない。このためには、設備コスト以上に高くつくサービスコスト、特に事業者が現地に点検や修理に行くための費用を大幅に削減する必要がある。太陽光発電は簡単な技術であり、誰でも取り扱うことができるはずである。簡単に言うと、1年に1回ぐらい点検に行く程度にできないかということである。(集金は誰かに委託するとして)ラオスで行われたJICAプロジェクトでは、事業者の手を借りなくてもユーザーは長期間にわたって太陽光発電設備を維持していた。これはなぜなのか。ラオスでは村落の中にバッテリを充電して電気機器を使うことに慣れている人がたくさんいたため、初心者が配線ミスなどのトラブルを起こしてもそれを発見し、正しい対処方法を教えることができた。もちろん、利用方法の講習会も行われたが、その内容もすぐ理解できたであろう。村落全体として直流電源であるバッテリや直流用電気機器の利用方法に対するノウハウを蓄積しているため、外部からの応援がなくても、何とか応急処置をほどこし、あるいは部品を交換したりして太陽光発電設備を皆が維持できたのである。要するに、設備に異常が出た場合に、まず必要なものはお金ではなく、知恵であるということである。

これに対してボツワナではバッテリを使ったことのある人はごく少数であり、村落全体に広がっていない。また、持ち込まれたバッテリや制御装置全体がカバーで覆われているため、どんな構造になっているのか知ることができない。こういったことから、村落全体に蓄積されるノウハウが希薄であり、細かなトラブルでも業者に来てもらわなければ解決しなくなっている。これでは業者が負担するコストはどんどん上がってしまい、料金の上昇につながり、ユーザーの減少、事業収入の減少という悪循環に陥ってしまう。ビジネス存亡の危機である。設備に異常が出た場合にお金で解決しようとしたのが間違いだったと言える。

村落という組織集団として太陽光発電やバッテリ利用について学習し、その知識を蓄積して、誰かがトラブルに遭遇しても集団内部で助けてあげられるようにできれば、その集団は強い組織となる。僻地でも持続可能性は高まる。このような問題は「組織的学習」というテーマとしてさまざまな場面で必要となる。たとえば、工場の複雑な生産ラインで生産効率をあげるために、多数の従業員が学習し、習熟し、そのノウハウをQCサークルのような場で全体として共有しているでしょう。

だから事業者は自らが行って修理するのではなく、問題が起きたらどのように対処したらよいかを教育し、村落全体でそのノウハウが維持されるようにすることを目標とすべきなのである。これは重要な教訓である。そのためには、装置のカバーを外してどんな構造になっているのかを教えるべきであったと言えるだろう。


教訓ー2 長期資金の確保(Long-term financing)

住民が太陽光発電設備の使い方を覚え、またバッテリを自己負担で買うようになるとプロジェクトの持続可能性は急速に向上する。しかし、最初の設備投資である太陽電池パネルやコントローラなどの費用を誰がどのように負担するのかという問題は残っている。この点については、JICAプロジェクトに引き続いて実施されている世界銀行によるラオスの例が参考になる。現在、ラオスでは政府が世界銀行の長期ローンを活用して太陽光発電による地方電化の全国的拡大を図っている。ここでもJICAのプロジェクトの方式と同じく、ユーザーが長期的な料金支払いで設備を購入するという方式(オーナーシップ方式)が採用されている。
まず政府が太陽光発電設備を世銀資金で購入し、それを地元業者に渡して利用者の住宅に設置させる。地元業者はユーザーから10年とか15年といった長期間にわたって料金を徴収し、設備費用相当分は政府に納付する。業者が得るのはサービス料だけである。こうすることで、地元業者は設備資金を自分の財布から出す必要がなくなり、事業がしやすくなる。ユーザーも毎月の料金が安くなるので利用しやすい。政府は世界銀行に長期的に返済していけばよいのでユーザーからの資金回収が少しずつであっても問題はない。三方丸く収まるということである。
地元業者が設備投資を自己負担するとどうしても2−3年で回収したくなるので、ユーザーは非常に高い料金を負担しなければならず、利用できる人はごくわずかとなる。これでは未電化地域のビジネスとして発展しない。
このように、設備費用について長期低利資金を確保して毎月の料金負担を少なくするスキームを構築できるかが知恵の出しどころである。


絶対失敗しない太陽光電化プロジェクト

 この調査で得たものは非常に大きい。この成果をもとに当社は途上国における太陽光発電設備の普及にこれからも取り組んでいく予定である。

 ボツワナの場合には、政府の予算で未電化地域に派遣される公務員のために大型の太陽光発電システムを設置した公務員住宅が建設されている。また、学校や診療所などにも太陽光発電設備が政府予算で設置され電気が使えるようになっている。こういった公共事業で設置された太陽光発電システムを村落電化にうまく使えないだろうか。この場合、設備を設置する業者は設置したら帰ってしまい、太陽光発電(特にバッテリ)の維持管理方法についてユーザーには全く教えていないため、バッテリが劣化して電気がつかなくなってもどうしたらのよいのかわからないという例があった。これではせっかくの貴重な設備が無駄になってしまう。業者にはユーザー教育という発想がない。それをきちんとやれば、将来、バッテリや新しい照明機器なども売れる可能性があるのだが。

 世界各地で学校や診療所などの公共施設に太陽光発電設備を設置する動きが広がっているが、このような場合に太陽電池パネルを大きめに設置して一般住民にも開放し、彼らが所有するバッテリの充電ができるようにしてあげると、太陽光発電やバッテリに詳しい人(若者は知識吸収力が旺盛)が現れて村落内に太陽光発電利用に必要な知識が広まる可能性がある。そういった知識基盤を育成することが重要であろう。住宅用のSolar Home Systemの設置に取り組むのはその後でも遅くはない。さらに、充電機能を利用する人から充電料金を徴収することが可能であり、学校や診療所の運営費用に充てることができるだろう。この構想「コミュニティーソーラーシステム」は名案だとは思いませんか...。
                             



 こういった議論に関して、バッテリを自己負担で買えない人が多いのではないかという異論があろう。確かに自動車用バッテリを買うためには、現時点では最低でも50ドル程度は必要である。この点についてラオスでは家畜の飼育・売却などによって一時的な資金を確保するという方法を多くの家庭が行っていた。しかし、こういった方法もどこでも使えるわけではない。ひとつのアイデアとして、「コミュニティソーラーシステム」のアイデアを拡大してバッテリ充電ビジネスを立ち上げ、充電したバッテリを有料(たとえば1回1ドル)で貸出す方式も考えられる。この方式であれば、現金収入が少なく毎月の定額料金は払えないユーザーでも資金負担が可能な場合だけバッテリを利用するという柔軟な対応ができるため、底辺の階層にも利用可能性が出てくる。彼らも灯油ランプの灯油代は毎月支払っているわけで、それとほぼ同じ負担であればバッテリと組み合わせた照明器具などを使いたいであろう。ただし、村の中でこのビジネスに投資する人(貸出し用のバッテリを買って貸出し料金で利益を得る人)が必要になる。商売センスのある人はどこにでもいるので、このアイデアも十分イケるのではないだろうか。さらにアダプタを使えば途上国で急速に普及しつつある携帯電話の充電にも利用できる。こういった充電ビジネスは大変よいBOPビジネスになるはずである.....。

 さて、ここまで読んできた賢明な諸君は気がついたことと思うが、電源があって電話があるのだから、あとはパソコンを持ち込めば、e-commerce、e-education、 e-healthcare など何でもできるのである。電灯がついたぐらいで喜んでいてはダメだ。
今まで文明から隔絶されていた村が一夜にしてネット社会に組み込まれ、現代文明の知恵を獲得して自立できる。digital divideなどクソ食らえである。まさに、21世紀における途上国援助の決定打となるプロジェクトと言えるだろう。
                                





りっぱなボツワナの公務員住宅
(屋根には温水器と太陽電池が!)



小学校にも太陽光発電が
(これでパソコンも使えるね)










村でみかけた太陽電池パネルによる充電屋さん
(翌日の順番を待つ人もいて商売としては安定?)