プロジェクト紹介


マイクロ水力発電によるベトナム農村の電化計画

 当社ではJICAから受託した事業として、2003年から2004年にかけて、ベトナム北部のホアビン省で地方電化のためのマイクロ水力発電パイロットプロジェクトを実施しました。このプロジェクトのねらいは山岳部でなかなか送電線が延長されない村落でも建設、運転、維持管理が可能な(いわゆるSustainableな)独立型発電システムを作ろうというものです。

 このようなシステムの前提条件としては、まず建設費用が安いということが重要です。村落内部の資金はほとんどありません。しかし一方でこういったシステムを必要としている村落は多数あります。ベトナム政府の公共事業などで建設していくことが必要でしょうが、予算は限られています。したがって、低コストで建設できなければなかなか実現できません。

 建設されればそれで終わりというわけではありません。運転操作は村人が行うことになりますが、操作が容易でしかも故障した場合でも簡単に修理できるようなシステムでなければ長続きしません。これまで、各国の政府開発援助(ODA)により外国製の発電システムを持ち込んだ例もありましたが、複雑で運転操作が難しいとか、スペアパーツが入手できないなどの理由から、短期間で運転停止となりがちでした。再びランプ生活に戻らざるを得ない住民は困惑するばかりです。

 当社ではこのような問題点を解決し、ベトナムの山岳部の自然や社会条件に適合したシステムであることを優先させたシステムを提案しています。このVillage Hydro(注)と名付けたシステムの主な特徴は次のとおりです。

  1. 村落の電力需要は少ないため、過剰設備となる大型化を避け、10kW以下の小型システムと割り切る。とりあえず大きめに作っておくという発想は後に必要以上の負担を住民に課すことになります。10KWクラスでも100戸程度への供給は可能です。

  2. 高圧送電ではなく、設備が簡単な低圧(220V)送電とする。この場合、電圧低下によって送電可能な範囲が限られてきますので注意が必要です。

  3. 装置を小型化・軽量化し、車両が通行できないところでも人や家畜によって輸送できるようにする。実際、トラックが通れない道しかない場合が多いのです。

  4. 機器の設計標準化・国産化によって、誰にでも安価に機器が入手できるようにする。この点は、コスト削減だけでなく、故障修理の容易さという面でも重要となります。今まで、特注品だった機器を量産品に近づけようという発想です。

 このような設計思想に基づき、当社ではホアビン省のテウ村で10kWのパイロットプラントをすべてベトナムの技術で建設しました。



見事な棚田が広がるテウ村


住民への計画説明の様子


工事中の様子(水圧管路用PVCパイプの運搬)
左下に施工中の導水路が見える



据え付けられた水車(左側の箱の中)と発電機



全長180M(高低差60M)の水圧管路
先に小さく発電所が見える


運転開始式典の日の着飾った村の女性

 この発電所は村に整備されていた灌漑水路を一部利用し、それに導水路、水圧管路、水車、発電機をつないでいます。新しく建設されたのは導水路約80M、水槽、余水路、水圧管路180M、発電所小屋、放水路、電柱、送電線などです。この工事は着工から約1ヶ月半で完成しました。また、水車と発電機、運転制御装置はハノイ市にある専門メーカーであるHydro Power Centerが製作しました。

 Village Hydroの設計思想に基づき建設されたこの発電所の総工事費は$23,000(約250万円)でした。ただし、灌漑水路の改修など住民が無償で協力してくれた部分もあります。これで最終的には村内のほとんどの住宅(総数79戸)に電気を供給できるはずです。したがって、1戸当たり投資額は約$300となります。この数値は他の電源開発方式と比べてかなり低いものです。このように低コストで建設できましたが、課題はこの発電所を長期間無事に運転し続けることです。そのためには、操作方法やいろいろなトラブル解決法について習熟する必要があり、また、運転員の人件費や保守費用の確保といった資金面の安定性も必要となります。もちろん、電気供給を受けている住民は電気代を払いますが、消費量はわずかですから毎月の収入はそう大きくはありません。厳しいやりくりが続くことでしょう。




 発電所運転員のニェット君(18)(左)とヴォン君(19)(右)

このように、発電所の運転開始がプロジェクトの締めくくりなのではなく、むしろ、これからの住民に対するトレーニング活動こそが本番だと言えるでしょう。このプロジェクトもそういった住民による自主的なマネジメントの定着を図ることが最大の目標となっているのです。

 村長のツーさんは「子供たちが電灯の下で勉強できるようになったことが最大の喜び」と感想を述べておられます。いずれこのテウ村出身者が大学を出てベトナムの指導者になるのではないかとひそかに期待しています。この状態がずっと続くようプロジェクトを推進していかなければなりません。


このプロジェクトについては2005年8月にJICA広報誌「国際協力」に紹介されました。


注) 当社の提案しているVillage Hydroについての説明(英文)がスウェーデンのStockholm Environment InstituteNews Letter(pdf)に掲載されています。