プロジェクト紹介


太陽光発電によるラオス農村の電化計画
(再生可能エネルギー利用地方電化計画調査)

この調査は国際協力事業団(JICA)から当社が中心となって受託し、実施したものです。この調査によって東南アジアの地方農村で太陽光発電の利用が経済的にも技術的にも持続可能(sustainable)であることが実証できたと思います。

調査開始 1998年9月

 ラオスという国は国土面積23.6万km2、人口は約5百万人の農業国であり、東南アジアの中でも比較的開発が遅れている国である。ラオスはメコン川の流域で水力資源に恵まれているため、多数の大規模水力発電所の開発計画が進行中であるが、現在のところ電気が使えるのは全世帯の30%にすぎない。我が国のように100%電化されているところから見ると電気のない生活
想像できないが、ラオスの農村部では昔ながらの灯油ランプ生活が今でも続いている。


ラオスの農村


ラオスの漁村(湖での内水面漁業)


 
発電所を建設して送電線を延ばしていくという方法は、電力需要密度が希薄な農村部では投資効率が悪く、なかなか進まない。このため、開発途上国の未電化地帯では、電灯をつけたり、テレビを見るために太陽電池を使う方法が徐々に普及しつつある。

 このJICAプロジェクトはラオスで最初の大規模な太陽光利用電化計画である。対象となるのは6つの村で、この調査が始まるまではランプで生活していた。なかには自動車用のバッテリを町まで運んで充電して電源にしていた人もいる。太陽電池があれば自分の家で電気をつくり、それをバッテリに蓄電して利用できるということを知っている人は皆無に近い。住民集会でその説明に多くの時間を費やした。


住民集会で説明しているところ


バッテリ充電屋さんの店先

調査折返し点 1999年6月

 1999年6月に太陽光発電装置の取り付け工事が開始された。ラオスの農村へ行く道路はよく整備されていないため、雨が降った後は泥沼と化すところも多い。悪戦苦闘の連続である。工事は雨季に一時中断し、全ての作業が終わったのは10月であった。取り付けたのは太陽電池パネル、充電・放電を制御するコントローラ、バッテリ、蛍光灯、コンセントなど。勿論、バッテリからの電気は直流電気であるが、こういった地域ではもともと自動車用バッテリを使っている人がいるので、直流12V用の電気機器が市場で売られている。工事完成後、村の中を歩くと早速買い込んだらしいステレオからの音楽が繰り返し聞こえてきたのが印象的であった。


車が立ち往生し、脱出に3時間


 太陽光発電装置は出力50Wの太陽電池パネルを1枚ないし2枚使い、発生した電気をバッテリ(鉛蓄電池)に充電しておき、電気が必要となる夜に使うという技術である。各住宅に取り付ける方式をSolar Home Systemと呼んでいる。これまでの灯油ランプに比べて格段に明るい照明が得られるため、家族の団欒、夜なべ仕事、夜間の読書・勉強などに大いに役立つ。テレビも見ることができる。テレビは娯楽用だけではなくニュースなどの情報源として農村でも重要な役割を果たしている。これまで暗闇で生活せざるを得なかった人々にとって、制約はあるものの電気が利用でき、照明やテレビが使える生活というのはまさに夢のようなことなのである。

 また別の方式として、村の中心にバッテリ充電用の大型な太陽光発電設備を建設する場合もある。これはBattery Charging Systemと呼ばれる方式である。
人々は1週間に1回程度自分のバッテリーを充電しにやってくる。このような方式は各家庭に発電設備を個別に設置するよりも少ない投資で各戸を電化できるため、充電のたびに持ち運びしなければならないという面倒臭さはあるものの、所得の低い地域ではSolar Home System よりも有望な方式と考えられている。



住宅に取り付けられた太陽光発電装置

完成式典の様子

完成したバッテリチャージ設備



◎パイロットシステムによる実証  1999年10月〜2000年12月


 この調査の目的は、開発途上国でこういった太陽光発電装置を普及させ、また長期間にわたって維持していくためにどのような組織や制度が必要かということを実証することにあった。単に装置を動かてみるだけでなく、こういったソフトな問題に対する最適解を導くことが我々開発コンサルタントに課せられた役割なのである。このため、ラオス農村部の未電化村落にSolar Home SystemとBattery Charging Systemを試験設置して、料金設定や住民によるメンテナンス能力などを確認しながら調査を進めることとなり、第1期には合計6カ所にSolar Home System260基余、Battery Charging System3基(合計8kw)を設置した。太陽光発電についてこのような大規模なパイロットシステムを設置したのは珍しいケースである。

 開発の現場は貧しい地方の農村部であり、維持管理に必要なモノ(お金、技術、人材)をどのように確保するかということが大きな問題となる。そのためには壊れにくく、維持管理が簡単なシステムにしてメンテナンスフリーに近づけることが重要であり、また十分なスペアパーツを保有することも必要である。さらに、日常点検や簡単な故障修理は自分でできるように訓練しておくことも重要となる。幸い、太陽光発電については技術進歩が著しく、最近ではほとんどメンテナンスを必要としないシステムとなっている。この点で途上国の地方電化にはうってつけの技術である。


 ラオスの農民は現金収入はわずかで、貯金を持っていない人がほとんどである。彼らにとって数百ドルもする太陽光発電装置は極めて高額な商品であり、電気は欲しいけれどもとても払える金額ではないので諦めざるをえない。我々のこれまでの調査結果から、彼らが電気について支出可能な金額は毎月1ドル程度であることがわかってきた。したがって、この範囲内におさまるような長期の分割払い制度があれば導入できる可能性が出てくる。このため、20年間のリース契約制度を試験的に導入した。リース期間終了後は設備を所有できる。集金は村内の幹事役(電化委員会メンバー)が行っている。現在、パイロット事業のユーザーとなっている現地の人々は全員毎月約1ドル程度の使用料(リース料)を支払っている。この料金は基本的に太陽光発電設備の費用をユーザーが毎月少しずつ払っているということである。この金額は彼らの家計からすれば決して少ないものではないが、滞納者は皆無に近い。この事実からも電気の恩恵は非常に大きいと推測される。

 また、太陽電池パネルは20年以上使えるが、バッテリは3-5年で寿命となるため、その取替費用について準備しておくことが大切である。バッテリの交換ができないといずれ太陽光発電装置は役に立たなくなり、放置されてしまう。我々もその点に不安を持っていたが、現地の人たちがバッテリ代金が20ドル(大金!ですが)なら豚を飼育して、それを売って買うよと教えてくれた時に、このプロジェクトの成功を確信しました。現地の人々は何か大きな買い物をするときには、家畜の豚や牛を売って現金をつくるというケースが多いのである。例えば、自転車を買うとか、小型テレビを買うとき、あるいは家を修理したり、病気にかかって病院に行くときなど、これまでもそのようなやり方で資金を捻出してきたのである。どうしても必要なものであれば、彼らはそれを買う知恵を身につけているのである。実際には、電気があると夜に作業ができるため、機織りなどの手工芸の生産量が増えて所得も増えているといったうれしい話もよく聞く。農民はたくましく生きている。

 このようにしてスタートしたパイロットプロジェクトは1年以上のモニタリング期間に恵まれたため、我々に多くの貴重なデータを与えてくれた。パイロット設備を建設した時点でわが国の協力が終了してしまうという場合もよく見られるが、これはせっかくのプロジェクトで得られる成果を放棄してしまうに等しい。是非ともモニタリング期間を長めに設定してもらいたい。(設備系コンサルタントはいやがる話かも知れないが・・) 

 その後も、装置は順調に稼働しており、また、集金や住民によるメンテナンスも計画通り行われている。さらに、第1次パイロットの後、ラオス政府ではさらにSolar Home Systemを100基余独自に設置し、我々と同様の方式で運営し、自分たちだけでもプロジェクトマネージメントができることを実証した。ラオス側関係者もこの成果に自信を深め、全国各地で同様の事業展開をしたいと考えている。この調査によって太陽光発電を利用した地方電化のモデルをラオス政府に提案することが出来たと言えるだろう。
このように、調査団がいろいろ苦労してきた結果が徐々に報われつつあり、太陽光発電がラオスの農村社会に根付いていくことが期待される状況になりつつあ。この後に続くプロジェクトに期待したい。



現地での最終報告会の様子(2000年12月)