プロジェクト紹介


  ベトナムの電球工場ガラス炉の省エネルギー計画
  (地球温暖化対策共同実施等推進基礎調査ーその2)

 

 ◎調査実施の背景

 
当社ではラオスのビール工場の省エネ計画調査に引き続き、2005年度にベトナムの電球工場を対象にした省エネ可能性調査を実施した。この調査はやはり新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)から受託したものであり、地球温暖化対策のために、我が国が協力して相手国でのエネルギー消費を節約して炭酸ガスの排出量を減らすこと(CDMプロジェクト形成)を目標に、具体的な工場を対象として調査するというプロジェクトである。

 ラオスのビール工場で調査し、それを実際にCDMプロジェクトに育ててきたという経験を生かして、ラオスよりも工業化が進んでいて工場の数も多く、エネルギー消費量も大きなベトナムで省エネによるCDM案件を成立させ、それを手本に多数の工場に同様のスキームを適用してベトナムの省エネを進め、また地球温暖化問題に貢献したいという希望を持って調査を開始した。ベトナムは工業の発展により経済成長が著しく、エネルギー消費量は高い伸びを示していて、石油や電力が足らない状況になっている。こういった状況から省エネルギーというテーマは重要な政策になってきているのである。また、昔からある工場が多く、これまで社会主義体制下で続いてきた非効率な設備や操業方法がまだ残っていて、海外との競争にさらされているベトナム経済の足を引っ張っている。こういった工場では競争に負けないよう省エネや合理化に取り組まなければならないはずであるが、井の中の蛙で、世界レベルの最新の技術情報に接することが少ないため、実際にはどうしたらよいかわからないままでいるところが多いのである。こういった事情から、ベトナムは工業部門での省エネの余地が大きく、CDMプロジェクトの宝庫と言えるだろう。

 今回の調査対象となったのはハノイ市郊外にあるRang Dong社である。ここでは電球や蛍光灯を一貫生産していて、外側のガラス管も自社工場で作っていた。ガラス製品をつくるためには1500度前後の高温でガラスを溶かして成形するための加熱炉が必要である。Rang Dong社は2基のガラス熔融炉を持っており、重油を燃料として使っていた。



Rang Dong社ショールーム


     ガラス熔融炉



◎調査結果と提案内容


 ここはラオスのビール工場よりも問題が多い。加熱炉の運転がすべて運転員の勘によって行われている。温度計、圧力計などの基本的な計測装置が壊れたままである。このため、燃焼制御の基本的な指標である空気比がメチャクチャであり、余計な空気を高温に加熱して排出している。全くの無駄であるが気がついていないのである。途上国ではこういった運転管理がお粗末な現場が非常に多い。その理由のひとつは、海外(先進国も含む)の経営風土がトップダウンであり、また終身雇用の伝統もないから労働者の身分は安定せず、トップに嫌われないことが最優先となり、機械が一部壊れても指示されるまで直さず(修理を提案した結果、社長の気に入らなければ自分のクビが危なくなる)、生産性が落ちても黙っているということになるわけである。この点は経営学の重要なテーマなのだが、説明すると長くなるのでここまでとする。

 ここに空気比を正確に自動制御する装置、わが国ではとっくに実用化されている技術であるが、それを導入すれば大きな省エネが実現できることは明らかである。この場合、その提案を工場長に説明するだけではだめである。先ほども述べたとおり、こういった話はトップがすべての実権を握っている途上国企業では必ず社長とネゴしなければならない。工場長に説明して、あとは社長に報告しておいてくださいと言っても放置されるのがオチである。幸いにも、Rang Dong社の社長は省エネに関心を持っていたので、我々の話を真剣に聞いてくれた。その後、2006年2月にはわが国を訪問して同規模のガラス炉を見学し、我々の提案がデタラメではないことを自分の目で確かめて帰っていった。
なかなか見所のある社長である。

 我々の調査結果を受けて、Rang Dong社では2007年に設備更新する予定だったガラス炉に燃焼自動制御機能をとりつけることを決定し、その工事を日本企業に発注した。こういった新技術の導入によって重油消費量は約30%削減されるはずである。一般に途上国では資金がないため省エネ投資ができないという説明がなされることが多いが、当社はそうは考えていない。途上国でも企業として何年もの実績がある会社は、巨大な投資でない限り、キャッシュフローの問題は自分で解決できるのである。彼らが必要としているのは資金援助スキームよりも、省エネ技術に関する正確な情報であり、現状の的確な診断と最適な提案ができるプロジェクトアーキテクトなのである。
 
 このように我々の省エネ提案が実現されたわけで、次はCDMプロジェクトにまとめる段階となる。しかし、ここで大きな問題にぶつかった。まず、投資判断として、この電球工場の案件をCDMにするための専門機関の審査費用等が最近、高騰しており、予想されるクレジット量では元が取れそうもないという見通しになってきたこと、また、ベトナム政府の協力を得るための準備活動に時間がかかるという事情もある。さらに、この工場の過去の操業データが不備であるため、省エネをしないでいた場合にどの程度重油を使っていたかを数値で説明することも難しい。こういった事情から、実際にわが国の技術を導入して省エネは実現したのだが、CDMにすることは別問題として難しいという判断になってしまった。大変、残念である。世の中、すべてうまく行くとは限りません。これもよい経験ということで割り切って、次の案件を探さなければならない。